不織布とは、どんな素材?
不織布(ふしょくふ)とは、読んで字のごとく「織らない布」のことを言います。普段、私たちが着ている服は糸を織ったり編んだりしてできた布を、縫製したものです。その一方で、不織布は織ることも編むこともしません。
不織布はさまざまな分野で活用されていますが、どのような種類があり、それぞれどんな特徴があるのか知らない人も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、不織布の種類と特徴を解説し、どのような用途が考えられるのかをご紹介します。
1、不織布のメリット
そもそも不織布は、羊毛やコットンなどの天然繊維、レーヨンやアセテートなどの化学繊維、ガラス繊維や炭素繊維などの無機繊維など、いろいろな合成繊維が原材料として利用されます。 一般的には、ポリプロピレンやポリエステルなどの合成繊維が使われています。
そんな不織布は、布のように「織る・編む・縫う」といった工程を必要としないため、大量生産が可能です。 そのため、原料価格が安定していれば、安定した価格で供給することができます。また、不織布の性質(ろ過性・保湿性・通気性)のほか、さまざまな機能を付加することができます。
2、不織布の種類
一般的に使われている布と違って、織ることも編むこともしない不織布。その特性を活かして、生活や産業のさまざまな分野で不可欠の存在となりつつあります。とは言っても、一般的にはあまり知られていない素材。それでは、不織布にはどのような種類があり、それぞれどんな特徴を持っているのでしょうか。
2-1 製造方法による不織布の種類
前述した通り、不織布には「ろ過性・保湿性・通気性」といった基本特性があります。加えて、原料や製法によって、目的や用途に合わせてこの特徴を引き出して機能を高めたり、さまざまな特性を付加することができます。
不織布は、一般的には、①不織布の繊維を並べてシート状のものを作り、②その繊維を結合/接着して製造されます。 ①と②の製法を種々組み合わせることで多様な不織布が作られます。
2-2 代表的な不織布の特徴と用途
1.ウェブ(シート状の繊維)の作り方
・スパンボンド法
合成樹脂のチップを繊維化・シート化して不織布を製造する方法です。原料から、直接、糸を紡いで(紡糸)シート化します。 繊維を自己接着させるため、生産性に優れています。包装材料、おむつといった衛生材料からフィルター、土木、建築等まで、幅広い用途で利用されます。
・メルトブローン法
スパンボンド不織布と同様に、直接、紡糸、シート化、繊維の結合を行う方法です。 繊維径が数ミクロンと、非常に小さいことが特徴で、衛生材料、フィルターなどに利用されます。
2.ウェブの結合の仕方
・ケミカルボンド法
繊維をシート状(ウェブ)にしたのち、接着剤樹脂を含ませることで、シート内の繊維を結合させる製造方法です。この方法で生産することにより、多彩な性質の不織布を生み出すことが可能となります。 主に工業資材などに利用されます。
・サーマルボンド法
比較的低温で溶ける繊維を使用し、シート内の繊維同士を熱融着させる製造方法です。この方法は接着剤を使用しないため、衛生面に優れ、医療用途、衛生材料用途に利用されています。

<サーマルボンド法> ウェブに熱溶融性繊維を混ぜ込み、その繊維を部分的に溶融し繊維間結合するもの。または、高・低融点からなる二成分繊維の低融点部を熱エアースルー法、加熱カレンダー法、超音波法などがある。
・水流交絡法
シート内の繊維を高圧水流により絡み合せる製造方法です。こちらの方法も接着剤を使用しないため、衛生面に優れています。また、不織布の原材料として、さまざまな素材や繊維が使用できるだけでなく、異素材との貼り合わせも可能です。
※製造方法について、一部、日本不織布協会HP「製造工程の種類」より抜粋
3. まとめ
不織布が生産されるようになってから、60年ほどの歴史しかありません。しかしながら、量産化技術の進歩により、低コストも実現できる不織布の用途は広範囲にわたっており、さらには各企業で高付加価値製品を開発したことで、新たな市場創出に拍車がかかっています。さまざまな特性を持っていることから、いま使っているものが、知らぬ間に不織布に取って代わることも近いのではないでしょうか。